【第9回】「今後のロボットに注文!!」

先回のこの講座は今年の1月でしたから、その直後に
”コロナによるPandemic:COVID19”に見舞われたわけです。私の生涯でも第二次大戦、敗戦、東日本大震災に次ぐ大きな出来事となりました。しかし、まだ終わったわけではなく、途中であり、日本は見かけ上は少ない被害で済んだように見えても、計り知れないダメージと、かつてない”大改革”を突きつけられているのは周知の通りであります。
要改革を列挙するときりがないほど多項目にわたり、これは大変だ、とつくづく思います。最も卑近な例はもちろん「ウイルス対策医療」です。保菌者と非保菌者の非接触動線の設定とか、医療関係者の保護と働きやすい環境の設定とか、IC製造のクリーンルームの経験ではとても対応できないレベルの対応策が必要なことはわかったし、世界に冠たる「米国の医療水準」もまだまだということもわかりました。

さて、ロボットに話題を戻しましょう。まず、今回のCOVID19で素人目に「こんなロボットがあればなあ」というものを挙げてみましょう。

(1)人工呼吸器とECMOのロボット制御:

これは、重篤な患者が運ばれてきて、まず命の分かれ目になる装置です。もっと簡単だと思っていた人工呼吸器にもエキスパートが数人付かないと運用できないとは驚きです。全体を自動制御ロボット機器に仕立てないと、どこの国でも使えることにならないですね。人工呼吸器は多分次の機会に量産できるでしょうが、”数人のエキスパート”のロボット化は必須条件です(図1)。

 

(2)ウイルス感染、抗体検査機器の完全自動化:

これまた驚きです。鼻の奥深く綿棒をぐりぐりと差込み、くしゃみをするな!といいながら検体を取り、それを試験管に入れ、白衣の女性がピペットを使って多数の穴の開いた容器に丁寧に? 入れている光景をみて、私の学生
時代の化学の実験と同じではないか? なぜ自動化できないの? とつくづく思いました。その後の処理も・・・。最近は唾液を使って可能、ということなので、これは絶対、採取から結果判定までロボット化してもらいたいですね。

図1 ECMOの概念図(藤田医大による)
COVID19関連ばかりだと少々辟易気味ですので、ちょっと話題を変えましょう。医療のロボット化・AI化に関連して(非公式に)ずっと主張してきた「健康相談BOX」
です。AI、画像診断、遠隔医療、5G、とようやく周辺技術・インフラが整ってきたのでここで提案したいと思います

 

(3)電話BOX型”健康相談ステーション”の提案:

下の写真は横浜市内のレトロな電話BOXで、本提案とは関係ありません。しかしこんなイメージです。

図2 健診ステーションの外観イメージ
さて、生身の人間であるわれわれは日々の暮らしの中で自分の身体や健康状態に不安を持つことはありますね。特に日常と違う気分、体の異変、軽いが気になる症状がでたとき、とても不安になります。すぐそばの配偶者、友人、知人に相談すればいいじゃないか、といわれそうですが、相談しにくい案件(場所や症状が微妙な部位、そんなことで悩んでいるのかと一笑に付されそうなこと、等)もあり、放っておいていいのか、すぐ病院へ行くべきなのか、おおいに悩むことがありませんか? 周りの人に「大丈夫だよ」といわれると余計心配になります。そんなに心配なら病院へいけばいいじゃないか、といわれそうですが、施設の整った大病院は紹介状がないと診てくれませんし、いったんかかると今度はこれでもかと高額検査機器による検診が続きます。
われわれの希望は「今の症状は放っておいていいのか、それとも見てもらう必要があるのか?」という命題を解決してもらいたいだけなのです。
さて、それでは「健ステ」にはどのような機能が必要なのでしょうか? 私はズバリ3つの機能①名医による問診、②最小限の物理データの提供、③最適な医院の紹介、があればいいと思います。①は名医が関与して作成した問診ソフトでアンケートにどんどん答えていけば次第に絞られていくような形です。②はそれを補うもので、物理データ(例えば脈拍、血圧、体温、眼圧、等および4Kカメラによる顔色や問題部位(皮膚など)の状況)の判定、所見等です。化学データ(血液、尿等)は無理でしょう。でも化学データも、指示により、薬局で売っている「キット」を使って自己データがとれればある程度可能でしょう。
最近流行り出している「離島や過疎地を対象とした遠隔診断・治療」もこんなものかも知れません。うまくデータの授受ができれば1時間程度で診断がつくのではないかと思います。これを1000世帯につき1箇所くらいずつ
設置するのです。一回2~3千円位払っても利用者はいるのではないか? と思っています。また病院の混雑緩和にも役立つのではないか? と思っています。“Bridge”に載せて反応はあるの? それはあまり期待していません。

 

(4)野良ロボットについて:

これは製造業やオフィス改革などを見込んで導入したロボットが何らかの理由で管理不在となり、有効に使われないまま半ば放っておかれている状態を示します。使いこなすのにトレーニングとプログラム・スキルを要する機器は管理者がいなくなった状況でこのような状態になるのは珍しくありません。この現象はRPA(Robot Process Automation)の導入後現れるもので、原因は①ロボットが頻繁に止まる、②その部署のスキル不足、③ユーザ部門が使おうとしない、などの原因によります。中小企業の現場などに導入の場合は気をつけなくてはなりません。

 

(5)家庭向け”LAVOT(らぼっと)”のヒット:

これはこんなおじさん(林 要氏、Groove X社)が開発した家庭用癒し系ロボットで、犬、ねこ代わりに扱うもののようです。性能は超ハイスペックで①数多くのセンサと3つのコンピュータを内蔵し、②触ると暖かい40℃、③自由に移動でき、いろいろな表情を持つ、④着せ替えもできる、とのことですが、価格は30万円もするそうです。高島屋と連携してPRをやっているそうですが、「扱いで表情が変わる」、「なでると寝てしまう」、「呼ぶと喜んで来る」とか猫のような反応で人気なようです。

図3<LAVOTと開発者・林氏>
“役に立たないが愛らしい”というコンセプトで「高価でも売れるはず」という発想は面白いですね。皆で練り上げた案ではなさそうで、さすがロボット・ベンチャーというところ。
さて、いろいろなロボットを紹介してきましたが、ロボットに関しては今回で一応終わりといたします。
さて、もう少し紙面がありますので、おまけを一つ。

 

(6)お弁当詰めロボット: 

お弁当といっても“なだ万”の数千円もする豪華弁当ではありません。コンビニで成型さ
れたプラスチックに入っている\460とか\550とかで売っている格安の奴です。ごはんと鮭と卵焼きと野菜の煮物に
漬物くらいですよね。これは早起きのおばさん連中が早朝4時から詰めている図を想像しますが、それでもコストが厳しいので単純な3軸のロボットで詰めますが、美的センスはありません。おばさんは”卵焼きのそばに鮮やかな緑のインゲンを添え、ごはんの端に赤い紅しょうがをちょっと配置するなど工夫を瞬時にしますが、ロボットには無理です。そこで「これはロボット詰めなので20円引きにします」だと。