【第10回】「5G,ローカル5G,Beyond5G」

1) はじめに

以前、5Gについて一度取り上げました。ここでもう一度取り上げた理由は、どうやら事業化は本格化する兆しが見え、それと同時に筋書きが複雑化してきていますので、それらを整理してお伝えするのが目的です。

2) 5G,ローカル5G,Beyond5G(6G)とは何か?

最近、この3つの用語が新聞紙上でも飛び交うようになってきました。そこでまず簡単に区別を述べておきます。

① 5G:これはご存じの通り、移動通信方式がほぼ10年毎に代わり、これは第5世代で2020年~。
② ローカル5Gとは?:

地域や企業が自らの建物内、敷地内で、個別に5Gを構築(但し免許取得が必要)し、その上で独自のカスタム・ワイヤレスネットワークを構築できるという制度で、大手通信メディアの傘下でなく、独自のシステムを構築できる点では画期的といえます。地域自治体を巻き込んでのローカル色豊かな実証実験が各地で行われています。
③ Beyond 5Gとは?:5Gは2020年~、また6Gは2030年~の実用化が見込まれています。その中間の2025年には、大阪万博が予定されています。

これを境に前半は 5Gの実証実験と社会実装、後半は6Gに向けた仕様作りとシステム構築の準備を行うという建前でロードマップを描いたということになります。

 

3) 5Gの最前線とトピックス

① 5Gスマホの進展: これは新聞、雑誌に華々しく分解記事が紹介され、実際に5Gスマホが販売されているので、ここでは一例として昨年10月に発売されたiPhone12(8~10万円)に搭載された無線給電機能を紹介します。 充電器との位置合わせを容易にしたMagsafeに対応し、給電能力を最大15Wに高めています。図3に給電装置の構成を示しています(日経誌)。

 

②モバイルSCOTによる遠隔診療:NTTデータと東京女子医大が実証実験結果を2020/10/23に披露したもので、スマート治療室(SCOT)を可搬型にし、離れた場所にいる専門医が移動型SCOT内で行われている手術の状況を高分 Circ解モニター画面で見ながら執刀医に指示することができる装置です。

④ 5G向け部品・材料の発展例:
<例1>メトロサーク(Metro Circ.)基板(村田製作所)
買収したプライマテック社の液晶ポリマー樹脂(耐熱300℃)を、低温焼結セラミック技術(LTCC)を用いて最大20層を一括プレス接着して作る多層基板で、一層は10~50μmで、接着剤を使わないため多層化しても薄く、高周波特性もよく、水分などにも強く、折り紙のように折り曲げた形状を保持できるという特徴があります。ただ、製造難易度は高く、数年の困難を乗り切って、やっと量産にこぎつけました(図5)。

図5 5G回路用メトロサーク基板

 

<例2>ガラス・アンテナ(NTTドコモ+AGC)
5Gのうち28GHz(ミリ波帯)を用いる場合、電波は短距離しか届かず、しかも直進波です。ただ、高周波であるためアンテナの寸法は小さくて済みます。このため建物や車のガラス窓などに張り付ける小型のガラスアンテナが開発されました。電波の 透過、反と射、一部反射の切り替えも電気的に可能で、小型基地局に用いられます(図6)。

図6 5G・28GHz基地局用ガラスアンテナ

 

4) ローカル5Gへの取組みと発展の予感

①ローカル5GへのNTT-G+民間の取組み:極めて具体的なニーズのある地方で自治体と民間が共同で小ぶりで独特なシステムを組上げるのに適します。
②通信系企業(例えば富士通、NEC)と機械系企業(例えば森精機、愛知機械)が組んで、AGVを用いたフレキシブル生産システムの構築などの例。
③具体例:Softbankの「おでかけ5G」+大成建設の“ティーアイロボ”(ロボット土木作業機械群)を組み合わせた三重県の実証実験。「お出かけ5G」は28 GHz可搬型・到達距離100mの可搬型システム。

図7 Softbank + 大成建設の無人土木作業システム

 

5) Beyond5G と 6Gへのロードマップ

2020年12月にBeyond5G新経営戦略センターが発足しました。そして今後下記のようなロードマップの下、Beyond5Gの推進が進められます。

図8 Beyond5Gのロードマップ

 

6) おわりに

以上述べたように、5Gの導入から、その実用化、さらに6Gに向かっての備えなどは最先端を走っている米国、韓国にやや遅れをとっているものの、このCOVID19の下としてはNTTを中心として結構着実な進め方となっています。特にローカル5Gなどの進展は注目すべき実績をあげつつあると思います。

―以上