③パワーデバイスと実装(自動車系)
コース区分 | アドバンスト・コース(A) |
講座名 | パワーデバイスと実装(自動車系) |
日程等 | 2016/12/6(90分) |
講義の概要
小型・軽量であるからいろいろな製品に取り付けやすく、しかも高効率で低価格、高信頼でもある。こんな魅力に満ち溢れた新世代電力変換器(インバータやコンバータ)の実現が期待されている。実現の鍵は低いオン抵抗率と高速スイッチング性を呈する低損失高耐熱SiCユニポーラパワー素子モジュールを高いジャンクション温度(Tjmax > 200℃)、高キャリア周波数(fSW > 20 kHz)で動作させる総合技術である。高fSWドライブは平滑コンデンサや絶縁トランスのような受動部品の体積とコストを著しく縮小化させる。高Tjドライブは冷却器の空冷化を実現するとともに、その体積とコストを抜本的に縮減させる。このような特徴はPHEV/EV/FCVなどの電動車で使用するパワーコントロールユニットでも大変魅力的である。
本講義では、2005年~2009年に実施した「NEDO高密度インバータ基盤技術開発」と2009年~2013年にかけて実施した「NEDO次世代パワーエレクトロニクス技術開発(グリーンITプロジェクト)」、2009年~2013年にかけて実施中の「NEDO-SIP EVモータ駆動用分散インバータの研究開発」の成果のうち、筆者が開発を担当したSiCデバイスの高温高信頼化とコンパクトSiCパワーモジュール開発に係る成果を、苦労談も交えながら、分かり易く紹介させていただく。前者も後者もいま正に湯気が立ち昇っている「旬」の技術であり、勢いよく進化を遂げている技術でもある。
始めに、このような革新的な電力変換器が強く求められるようになった背景を述べた後、上述したように、これは次世代半導体(SiCやGaNなど)ユニポーラデバイス+高周波駆動+高温拡張動作で実現できることを詳しく説明する。つぎに、高耐熱の次世代半導体材料で作った次世代半導体デバイスが実は熱に弱い問題を取り上げ、それを解決するための対策と結果を提示する。
つづいてパワーモジュール技術を解説する。ここではケーススタディーとしてハーフブリッジモジュールを取り上げる。上記努力によって耐熱性を備えた次世代半導体デバイスを使ってパワーモジュールを構成し、高Tj+高fSWでドライブしたとする。このとき起こる問題点な何か?。深刻な問題は2つ、一つはパッケージ材料やその界面の熱劣化と熱応力劣化、二つはループインダクタンスが引き起こす電圧サージ問題や電流リンギング問題である。これら問題の解決法の一例を詳しくここで説明する。
次に、ハーフブリッジモジュールを3つ用いた3相AC 400V, 25kW (fSW = 50 kHz)空冷フルSiCインバータの設計と製作、連続出力試験の結果を紹介する。ゲートインダクタンスの低減、ドライブ回路の熱対策、熱設計なども解説する。
最後に、このような超小型モジュールを電動車のインホールモータに内蔵する(機電一体と呼ばれる)ための技術開発を紹介する。インホールモータはくるまのデザインと操縦性能を革新する期待の技術である。
■講師が最も訴えたいこと/期待したいこと
1.この技術が求められる社会的歴史的背景を理解する。
2.省エネの効果はシステムになったときに出る。デバイスではない。
3.半導体と半導体デバイスの違いを知ろう。
4.問題と課題はモノを作って動かして初めてわかる。
5.今日の実装技術はSi半導体デバイス物性を基礎にできている。
6.故に高温にすると新しい問題が噴出する。
7.新時代の実装には常識破りが求められる。
講師の自己紹介(プロフィール)
谷本 智(株式会社日産アーク)
経歴等
1980年日産自動車入社。総合研究所にて半導体材料、デバイス、プロセス
パワーモジュール、電力変換器の研究開発に従事する。2015年日産アークに異動。工学博士。
実装業界での経験等
2007年~今日まで次世代デバイスを用いたパワーモジュ
ールの企画、設計製作、試験、高性能化、高信頼化、故障解析に取り組んでいる。